♪プライベートレッスン始めました♪
諏訪支部会計 五味直美
行政書士業務の傍ら、日本語教師として諏訪市の日本語学校で外国人留学生に日本語を教えています。今年は新入生が入国できずにクラス数が減り、この機会に日本語教師のお仕事は少しお休みさせていただこうと思っていたのですが、夏の終わりに、日本語のプライベートレッスンを始めることになりました。
学習者は日本に遊びに来たまま帰国できなくなったフィリピンの方。ひらがなもカタカナも読めず、知っている日本語は「おはようございます」「ありがとうございます」「すみません」のみのゼロ初級。帰国予定日までは3か月少々。とりあえず文字が読めて簡単な会話ができるぐらいにまでなれたらいね、と思うところでしょうが・・・「N4取れたら特定技能もありなんじゃないの!?」という周囲の「オトナ」達の思惑もあり、なんと日本語能力試験N4レベルを目指すことに!!(※1)(※2)
日数的には確かに可能。ただし、1週間でひらがな・カタカナをマスターして、初級日本語教科書『みんなの日本語』全50課を1日2時間の授業で1課進むことができればね。ということで、勇気ある(無謀な)挑戦がスタートしたのでした。
学校では最近は中級以上のクラスを受け持つことが多くなり、まったく何にも通じない人に教えるのは本当に久しぶり。一般に、日本語学校の授業は「日本語で日本語を教える」直接法という教授法で行われます。どうやって!?と思われるかもしれませんが、絵を使い、身振り手振りで役になりきり、やってみれば案外なんとかなるものです。ですが、今回は短期速習だし、英語が話せる国の方だし、プライベートだし、「英語で日本語を教える」ことにしました。(こう書くと、いかにも英語が堪能みたいですけど、たいしたことはない。「英文科卒だからペラペラでしょ」とか言われるけど、使わなきゃ忘れます!)
8月の最終週から始めておよそ2か月半、現在26課まで終了し、27課を学習中です。ちなみに27課は可能動詞。これまでは「わたしは自転車に乗ることができます」と言っていたのが「わたしは自転車に乗れます」と言えるようになります。
が、やっぱり1日1課はかなり厳しい。普段私たちは意識せずに日本語を使いこなしていますが、外国人学習者はひらがな・カタカナに加えて第三の文字『漢字』を覚える必要があります。動詞は5通りに変化するし、名詞・形容詞の過去否定形など口に出すのもひと苦労。そのうえ、バラエティに富んだ助詞の数々。(※3)初めの頃こそ試験を意識して強引に進めてみましたが、人間いくらやる気があったって、覚えられないものは覚えられない。わからないものはわからない。N4コンプリートは諦めて、通常よりは速いペースを維持しつつ、わかるまで取り組むスタイルで、挑戦は続きます。
今年の日本語能力試験は12月6日。例年にない困難な状況の中で、みんなの頑張りが実を結びますように。みんなの夢が叶いますように。もちろん勇気ある私の教え子の夢も。
(※1)N4は、日本語能力試験のレベルの一つで、下から2番目。学習時間の目安は
300時間、語彙数1500、漢字数300程度。
日本語能力試験は、日本語を母語としない人を対象に、7月と12月の年2回、日本を含めた約90の国と地域で実施されます。初級レベルのN5からN1までの5段階。2020年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、7月の試験がほとんどの会場で中止され、進学予定の日本語学校生や、特定技能の在留資格取得を目指す外国人にとっては厳しい年となっています。
(※2)特定技能は、2019年4月に新設された在留資格。人手不足が深刻とされる14の特定産業分野に限られる。技能実習からの移行を除いては、特定産業分野別の試験と日本語能力を確認する試験に合格することが必要で、日本語能力試験の場合はN4以上。
(※3)例えばこんな感じです。
( )にひらがなを入れなさい。
わたし( )きのう( )晩、友達( )駅( )近く( )レストラン( )ごはん( )食べました。
みんなの日本語第10課まで勉強すると、さらっと解けるようになっているはず。