「遺言書のちょっといい話」
行政書士 帯刀正臣
去年、ご主人を亡くされた奥様から遺言書が見つかったとご連絡をいただきました。
早速、お話をお聞きするためご自宅へお伺いしました。
遺言書は相続登記をしなければと思い権利書を探していたところ、権利書と一緒に見つかった。遺言書は開封してはいけないことを知っていたので開けずにいた。
私達夫婦には子供がいない。
ご主人名義の資産はご自宅の土地のみ。
私も高齢なので早めに土地の名義を私に変えておきたい。
相続登記は大変な作業と聞いている。何から始めればいいかも分からないし、車も運転できないので困っている。とのことでした。
そこで相続人を特定するために戸籍謄本を集めなければならないこと。
自筆証書遺言は家庭裁判所で検認を受けなければならないこと。
登記申請は司法書士に頼むことをお話しました。
すると奥様は遺言書があるから家庭裁判所に行かなければならず大変だから、遺言書はなかったことにしたいと言い始めました。そこでご主人は奥様が相続手続きで困ることがないように遺言書を書いたと思います。遺言書があることによって相続手続きがスムーズに進むこと、遺言書がない場合は相続人同士で話合いをしなければならず揉めることもあること。又、家庭裁判所へは自分がお連れすることもお話ししました。
奥様は半信半疑でしたが、手続きのお手伝いをお願いしますということで、ご依頼をお受けしました。
夫婦に子供がいないので戸籍収集は他県に渡り少し時間がかかりましたが無事にすべて集まり、遺言書もご主人名義の資産はすべて奥様に与えるという内容だったので、相続登記も何も問題なくスムーズに完了しました。
遺言書をなかったことにしたいと言っていた奥様が、一人残される自分のことを考え遺言書を残したくれたご主人にとても感謝していました。又、遺言書が平成13年に書かれていたことに驚きと共に愛情の深さを噛みしめていました。
あなたも自分の思いばかりではなく、残される家族のために遺言書を書いてみてはどうでしょうか?