花
行政書士会諏訪支部副支部長 赤羽康志
最近、仕事の合間に美術館へ行った。ボタニカルアート展をやっていた。『ボタニカルアート』なるものが何なのかよくわからず、さして興味もなかったが、会員証の期限が迫っていた。よく晴れた気持ちの良い日で、仕事も順調に片付き、午後のひと時をアートに囲まれて過ごすのも悪くない。そんな気分だった。もともと美術館が好きで、以前は移動の途中で見かけた小さな美術館にぶらりと立ち寄ったりもしたものだが、ここ数年はそんな楽しい寄り道をすることもめっきり減った。久しぶりにゆっくり絵を観たい。未知の世界を知るのもまた面白い。
もはや当たり前となった検温とチェックシートの記入を終えて入った館内は、カップルや園芸好きと思われる女性のグループでそこそこ込んでいて、顔を近づけて熱心に鑑賞したり仲間同士で小声でお喋りしたりと、みんな思い思いに楽しんでいた。
ボタニカルアートは図鑑の挿絵などに使われる、植物を忠実に描いた細密画のようなものである。一本の花を分解して花びらから種までを詳細に描いたいかにも図鑑、という絵もあれば、オールドローズや水仙のように絵画として生活を彩る作品もある。インド、中国の逸名画家の作品はどことなくエキゾチックな香りがする。行けども行けども植物のみ100点余りの絵を観ているとさすがに疲れてくるが、美しい草花の絵付けがされたアンティークのウェッジウッドの陶器類や、蒸気機関の発明で知られるジェームズ・ワットが発明したコピー機、18世紀末創刊の植物雑誌などの展示もあり、植物画初心者をも飽きさせない。
大英帝国の繁栄が近代植物学の発展に与えた影響、ウェッジウッドとワットの関係など、知らなかったことも多い。ちなみに、今回の展示は18~19世紀初頭の英国の作品で、ボタニカルアートの多くは銅版画を複写したものである。
美術館を出て、併設の庭園を散策した。紅白の梅が満開だった。梅の香りを含んだ風が心地よい。心と体が深呼吸する。年明けに長野県外国人材受入企業サポートセンター(https://nagano-gaisapo.org/)が開所して以来、以前にも増してあちこち飛び回る生活が続いている。長野県行政書士会が県から受託した事業であるからには気が抜けない。
この先もしばらくは多忙な日々が続くのだろうが、心地よいと感じる時間を意識的に作って自分を労わることが必要だな。ほころび始めた河津桜の蕾を見ながら、そう思った。