人生の残り時間
長野県行政書士会諏訪支部長 赤羽康志
早いもので、6月も下旬。スイカのおいしい季節の到来である。例年になく早い春が過ぎ、5月に入ると暑い日が続き、早くも『夏バテ』という言葉が脳裏をよぎった。そんな時、頼りになるのがスイカである。夕方、仕事も少し落ち着いたところで、冷やしておいたカットスイカを頬張る時間が楽しみだ。べたべたしない天然の甘さとたっぷりとした水分が体の隅々まで滲み渡っていくのがわかる。日中の疲れが癒される瞬間である。調べたことはないが、おそらくカロリーは低め、栄養は豊富だろうから、夏の間は手軽なおやつとして重宝するに違いない。ちなみに、熊本県産が終わり、今は鳥取県産が店頭に並んでいる。
もう一つ、最近気に入っているのが小倉トーストである。といってもパンではなくアイスクリームだ。某アイスクリーム専門店の店頭で目にした瞬間、絶対に美味いことを確信した。もともと三度のメシより餡子が好きだ。三度もメシは食わないが。もちろん本物の小倉トーストも、わざわざ自分で作りはしないが、好きかと訊かれれば大好きだ。和洋折衷の最たるものだが、こんがり焼けたトーストに浸み込んだバターと餡子の組み合わせはなかなかのものだと思うのは、私だけではないだろう。その味をアイスクリームで再現したというのだから、試さない手はない。早速トライし見事にハマった。以来、週に一回は食べに行った。何度食べても感動的に美味であった。二日連続で食べたことさえあるが、飽きなかった。さすがに毎回ワッフルコーンではメタボに拍車がかかると自重し、カップに切り替えたが、某アイスクリーム専門店通いは止められない。それというのも、実はこの小倉トースト味は期間限定フレーバーなのだ。すでに現品限りの表示がされている店もある。寂しい気持ちもあるが、期間限定である以上、いつか必ず別れは来る。先週まで『小倉トースト』だった場所に『パイナップルサマーなんとか』などが涼しい顔で納まっているのを発見する日もそう遠くないことは理解しているつもりだ。せめてその日まで、一回でも多く食べておきたいと思うのである。
この歳になると、「昔の〇〇は美味かったなぁ」とか、「学生時代に通ったあの店の△△をもう一度食べたい」などと、戻らぬ過去を懐かしむことがある。「もっと食べておけばよかった」という後悔ではなく、ただただ懐かしいのである。また、季節のものなど食す時には、「あと何回この味を楽しめるだろうか」と考えることもある。年を取るということは、経験が増すことであり、残り時間が減っていくことでもある。食べ物に限らず、楽しむ姿勢を忘れずにいたいと思う。楽しい経験は財産になる。この夏のスイカや小倉トースト(アイス)のことも、何年か後にふと思い出すのだろうと思う。
先日、友の訃報が届いた。物静かで飄々としているようで、一緒にいると不思議と楽しい、いいヤツだった。彼と親しかった仲間と思い出話をしていて、ふと思った。あいつの好物は何だったのだろうか。何度も食卓を囲んだ仲だった。心より冥福を祈りたい。